……ここ数年、若い女のコたちのあいだで、根強い「ゲイ信仰」のようなものがあるのは知っていたが、中年サラリーマンたちのあいだでも、「いまどきの女性が崇拝するゲイとはなんぞや」ということで、強い関心を持っているのを発見したのは驚きであった。
彼ら男性にしてみると、女のコたちのようにキャッキャと騒ぎながら、本屋でその手の専門誌を覗き見たり、その筋の映画だとして評判になっているビデオを家でこっそり見たりするというわけにもいかず、何か判然としないものを感じて悶々としていたに違いない。
確かに、ニューヨーク、ロンドンなどの芸術・文化の集積地においては、いわゆるインテリ層、とくに、音楽・ダンス・演劇などのパフォーミング・アーツ系を中心に、ジャーナリストや評論家を含め、あらゆる職種の男性の大部分がゲイであったりする。八五パーセントがゲイであると言っても、決して誇張ではないのではないかと思えるぐらいだ。
したがって、芸術関係の仕事をする女性が、同じ業界で大変に魅力的な男性に出会ったとしても、ハナから相手はゲイだと決めつけてしまい、決して恋愛や結婚の対象としては見なさないという風潮がある。
事情を知らない人がこうした環境のなかに紛れ込んでしまうと、不必要な悲劇を招くことにもなりかねないが、お互いに割り切って仕事だけをしている分には、実に快適。恋愛感情のもつれや不倫などで無駄なエネルギーを浪費しないから、生産性が極めて高くなるのだ。まぁ、稀に男性同士のセクハラだの痴話喧嘩だのということが起こることはあるが、そういうことがあればこそ、女性のセクハラがいかに大問題であるかを男性たちが議論するようになるので、むしろ、願ったり叶ったりである……