……イギリスも、旧植民地、英連邦の人たちがたくさん本国に暮らしているから、もちろん文化的にも人種的にも多様な社会ではある。しかし、いかに英連邦出身者はすべて平等だと言ってみたところで、旧植民地時代からの支配者と非支配者の関係というのは、そう簡単に解消できるものではないもののようだ。
テレビの討論番組で、イギリスの人気司会者がオーストラリアまで出かけていって、「オーストラリアは英国女王ではなく、独自の元首を持つべきかどうか」というテーマの議論をするのを見たが、こうゆう内輪の話は、外国人にとっては何より興味深い。「地理的条件、経済交流圏からしても、もはや、オーストラリアがイギリス系の国であるとは言えないと思う」
とオーストラリア国籍の女性が言うと、イギリス人司会者は、
「どうしてですか? いままでイギリスは、さんざんあなた方を助けてきたではありませんか。どうして、そんなひどいことが言えるんですか」
などと真面目な顔をして聞き返している。
勇敢な女性は、
「現在のオーストラリアには、非イギリス系、非クリスチャン人口のほうが多いぐらいです。まして、オーストラリアで生まれ育った人にとっては、イギリスは単なる外国のひとつに過ぎないでしょう。同じように、イギリス生まれで、イギリスの女王であるエリザベス二世は、私たちにとっては外国人なのです。象徴としての君主がそんなに欲しければ、距離的にはずっと近い日本の天皇でも元首として迎えればいいじゃありませんか?」
という。
「そんな! 必然性がまるでない」
と、聴衆のなかの何人かの男性が叫ぶ。すると、この女性は、
「皆さんそういう反応をするでしょう? でも、実際のところ、オーストラリアにとっては、エリザベス女王も日本の天皇も同じくらいに外国人なのです。ましてや、民主主義のこの国に君主は必要ありません」
と答えて、拍手喝采を浴びていた……