……私が憂えるのは、身のまわりで子どもが欲しいと主張している女性たちの大部分が、このような「アマゾネス」型の、一般的な母親のイメージとはかけ離れた、しかし、大変に頭の良い人たちばかりであるという点である。
もしかするとこれは、いまの世の中が、いわゆる優しい母親のイメージ通りの既婚の女性たちにとってあまりにも子育てをしづらい環境であるため、結局、ひとりでも子どもを産み育てられる能力を持った、逞しい未婚の女性たちだけが子孫を残そうという意欲を燃やせるという、それなりに自然の摂理に叶った現象なのかもしれない。 生活のためにはまったく仕事を辞めるというわけにもいかず、かといって帰宅がさらに遅い夫には共に子どもを育てるなどという役割を期待するわけにはいかない。要するに、伝統的な絆で結ばれた夫婦であっても、子育てをするのは母親一方だけとわかっているわけだから、それなら最初から結婚せずに、まったくひとりで子を産み育てても同じことだというわけなのだろう。
むしろ、未婚で子どもを産み育てるほうが、初めから納得ずくの自分ひとりでの育児になるから、配偶者が共に子育てに参加してくれないという失望感を味わわずにすむので、既婚者に比べて苛立ちが少ないかもしれない。よくよく考えてみれば、ここまで働く既婚女性を追い詰めた日本の育児環境というのは、相当に劣悪なものと言わざるを得まい。それほど過酷な環境であるにもかかわらず、彼女たちの母親の時代に比べればずっと良くなっているなどと説教をされるわけだから、誰も子どもを産まなくなっても当然であろう……