……ごく常識的に考えてみても、社会の人口の約半分が女性で、残りの半分が男性である以上、現代社会が抱えるほとんどすべての問題の当事者が、女性だけであったり、男性だけであり得ようはずがない。たとえば、働きながらの育児問題、あるいは、老親介護の問題を考えるならば、それは「女性問題」ではなく、「男性/女性問題」のはずである。
しかし、実際には、女性のためには託児所付きでさまざまなセミナーに参加することが可能な公営施設があり、女性問題相談所もあるというのに、男性のためには託児所もなければ、男性問題相談所も存在しないのである。
「育児」や「老親介護」の問題は、女性問題、男性問題というより、本来、夫婦の問題であり、家族の問題なわけだから、できるならば男女が揃って相談に行けるような場所があることが望ましいと思うけれど、もし、それが不可能なのであれば、男性のためにも託児所付きの「男性問題相談所」があるべきだと思う。
だいたい、「女性だから子ども連れで来て当然」とか、「女性は多く問題を抱えているに違いないから相談所を」などという考え方がいかにもお役所的で、恩着せがましいのではないか。「女性専用施設」などというものを次々に設立するから、嫉妬にかられた男性たちが、「自分たちのほうが多く税金を払っているような気がするのに、男性問題相談所もなければ、託児所も作ってくれない」と強い不満を持ったりする(しないか? 実は、不満を持たないことが問題なのデス)のである。
こうして男性たちは、あまた存在する「男性/女性問題」は、託児所完備の立派な施設に出入りすることが可能な女性たちに任せて解決してもらおうと、知らんぷりを決め込んでしまうのだろう。
もし逆に、お役所が「男性問題センター」などというものを開立し、「成人男性だから、家族の問題について相談するときには子ども連れで来て当然だ。託児所も作っておこう。ついでに配偶者の女性たちが一緒に来られるような教養講座を開設したり、喫茶室を併設しよう」などという発想をしていたなら、事態は異なった展開を見せていたかもしれない。
一見、女性のためになるかのような「女性問題相談所」は、さまざまな問題を女性だけの問題として片づけてしまうことを助長しているだけのようで、こういうものが全国どこにでもあるのはいいことなのか、悪いことなのか……