……その時々の社会情勢と、自分自身の気分にもよるが、メセナ関係のセミナーでビジネスマンの方と同席することがあると、私は必ず、「企業は営利集団なのだから、何はともあれ、お金を儲けることに専念してください」と言ってきた。もちろん、バブルがはじけたいまも、いや、不況のいまだからこそ、お金を儲けることに熱心なのは、少しも悪いことだとは思っていない。問題は、そのお金を使って何をするか、何ができるかなのだから……。
企業とは、収益を上げるために、一切の無駄を省いた組織である。その企業が、「文化的な発想をする」こととはしょせん相容れないものだとしても、無理からぬことだろう。芸術も含め、文化とは、数知れぬ無駄の上に成り立つものだからである。それならむしろ、企業には金儲けに邁進してもらい、その成果をもって、無駄の達人であるアーティストや、私のような人間に、文化的な発想をすることを任せてもらうほうがよい。効率の良い企業組織を実現するのに長い時間が必要なように、無駄の達人となるためにも、それなりの教育、時間の積み重ねが不可欠なのだ。
だからとりあえず、いまは、不況を追い払って、「ツルカメ、ツルカメ」と、景気回復を期待する私なのである……