実業之日本社の月刊『実業の日本』で、約二年間に渡って筆者が連載してきたエッセイ・コラム「脳ミソにビタミン!」は、ひょんなことから『ツルカメ!』というタイトルで、同じ出版社から単行本化されることになった。なぜ、「脳ミソにビタミン!」が『ツルカメ!』になったのかについては、取り合えず『ツルカメ!』のまえがきに書いたが、本当のところは単なるもののはずみという以上の何ものでもない。
本年の年明け早々、単行本の打ち合せにやってきた担当者が、「単行本化にあたって何かインパクトの強いタイトルを!」と訴えるので、私は「う〜ん、何か短くて、力強いのがイイよね。ナントカって一言で覚えられるような.....。ツルカメとかさ!」と適当に受け流したのだが、なんと担当者は、「ほう、表紙はツルとカメの絵を描いてねぇ」と、悪ノリをするそぶりを見せたのである。その結果、私の脳ミソもつられてスパーク。すぐさま、「うん、そうして。シブイ雲水で、水の流れを挟んでツルとカメが立っているの。地は朱色、帯は金とか、いかにもオメデタイ感じでいいよねぇ」と答えたのだった。
一瞬、「そんな本を作ったら、この人、会社をクビになるんじゃ.....」と思わぬでもなかったが、それも、また、人生。心配は口に出さないことにして、具体的な装丁について短時間議論した後、私は『ツルカメ!』というタイトルがすっかり気に入り、また、たいへん魅力的な響きを持つコトバであるとの確信を持った。打ち合せが終ると、担当者は吹っ切れた表情で、「やっぱり、ご相談してみるもんですねぇ」との言葉を残し、足取りも軽く帰って行った。それから、「動物のイラストだったら、やっぱり柴田亜美さんじゃなくっちゃ」など、筆者の嗜好にもとずいて様々なことがバタバタと決り、社内で通るチャンスはほぼ無いだろうと思われていたタイトルも思いがけずに無事通過、そして、いよいよ六月上旬『ツルカメ!』は刊行されたのである。あげくの果てには、六月一五日、インターネット上で『ツルカメ・エクスプレス』というウェブジンまで始めることになってしまった。
なんと言っても、怖いのはもののはずみである。先ずは、『ツルカメ!』の読者からの反響を集めるのにEメールアドレスを設置して.....などと話しているだけだったのが、有能な友人たちがどんどん集まってきて、あっという間もなく、ホームページだ、いや、ウェブジンだという話になり、これほどの短期間で、本当にウェブジン『ツルカメ・エクスプレス』を立ち上げることができてしまった。持つべきは有能な友人たちである。そして、また、「ツルカメ」という言葉が持つ、独特の力強い響きも、私たちに強運をもたらしてくれているような気がする。
『ツルカメ・エクスプレス』は、明日の日本について明るく真面目に考えるサイトであると同時に、私たちの生活で、しばしば不足しがちな文化や芸術についての情報、そして、マルチ・メディアの本場カリフォルニア州のシリコンヴァリーからお送りする業界関連の会議や見本市情報、さらには、誰もが見ずにはいられない星占いまでを満載した、なんだかわけのわからないウェブジンになる予定である。
極めて劣悪な予算環境の中、健全なディベートの場を提供し、地域開発や文化政策への提言なども盛り込んで、様々な学術機関とのコラボレーションも予定されているのだから、まったく何が起こるか予測はできない。ひたすら「ツルカメ」という言葉が持つポジティヴな力を信じて、いかに、どれだけ潰れずに頑張るか.....それ自体が実験といっても良いだろう。何分、スタートしたばかりで、ウェブジンとして完璧だというわけにもいかないのが現状ですが、次回「7・8月合併号」を経て、9月頃までにはバイリンガル対応を含め、世界に恥ずかしくない『ツルカメ・エクスプレス』をお届けできるのではないかと思っております。読者の皆様方には、どうか、長い目で暖かく見守ってやって頂きたくお願い申し上げる次第です。
なお、当『ツルカメ・エクスプレス』では、全国の「鶴」や「亀」に関連のある名称の企業、地方自治体のデータベースを作成し、これらの企業や地方自治体のホームページへリンクするゲートウェーを提供するサーヴィスを開始いたします。必要があれば、「鶴」や「亀」にゆかりのある企業や自治体のホームページ制作のご相談にも応じますので、どうぞお気軽にお声をおかけ下さい。
次回から、このコーナーでは、『ツルカメ!』の続編として、巷に横行する不快な出来事や、心配の種について、皆様への「議論の素」を提供していくことになろうかと思いますが、先ずは6月・創刊号においては「はじめまして」のご挨拶ということで、『ツルカメ・エクスプレス』創刊のいきさつについて、簡単に御紹介させていただきました。最後になりますが、この創刊号制作のテクニカル総指揮に当たってくれたツルカメ王国騎士団のタニシ騎士団長とその優秀な騎士たち、コンテンツを提供してくれた王国家臣団の動物の皆さん、翻訳ヴォランティアの皆さん、諸君の健闘を讃え、ここに感謝の意を表します。とはいえ、読者の目は厳しいもの.....。『ツルカメ・エクスプレス』の発展を祈念しつつ、ベストを尽くして、面白い実験が続けられるよう、これからも日々の研鑽を積んでいきましょう。
それでは皆さん、ツルカメ! 良き一日をお過ごし下さい。
編註■ネットワーク上の仮想王国「ツルカメ王国(TKK)」は当初、大阪で運営されていましたが、『TKE』第2号の発信を待たずして、そのサイトは日本を飛び出してしまいました。
まさにインターネットならではの現象なのですが、今回そのアメリカ西海岸への引越しを契機に、“王国”のメタファを“豪華客船”に発展させて、生まれ変わりました。この新生TKE…、どうぞ末永くご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。